yesマン 感想

めちゃおもしろかった。ほとんどの場面がギャグテイストで進行していくため、余裕で最後まで飽きずに見られる。そして、ギャグテイストなのに、本作で描かれるテーマはかなり人生の哲学を揺さぶるものがあり深い。

本作は主人公カールの内面の成長物語で、生き方の変容を視聴者は見せ付けられる。本作を3分割すると以下のようになるだろう。

 

⑴NOしか言えない時代。
友達の誘い、銀行の融資、全てにおいてNOとして言えない。一人で気楽であるとともに、今後孤独死するのではないか(そういう夢を見ている)という不安があり、人生に楽しみがない。

 

⑵YESしか言えない時代。
セミナーにいき、カールはYESしか言えなくなる。その結果、世界は広がり、恋人もでき、友人も増えた。彼の人生が全て好転し始めたのを視聴者は感じるだろう。

 

⑶NOもYESも言える時代。
恋人に同棲を迫られたカールはYESという。しかしそれはセミナーのせいでYESしか言えなくなっているだけであり、本心からのYESではないことが彼女にバレてしまう。
そこから彼女とは音信不通になるが、彼女に「同棲はNOだけどそばにいたい」という思いを伝えるために走る(その間ナースに静止されても全てNOと言い放つ)。彼がYESの呪縛から解き放たれて自分の本心で会いに来てくれていることを感じた彼女はカールとよりを戻すのであった。

 

NOしか言えない時代のカールはとにかく人生がつまらなそう。YESしか言えなくなって、彼の人生は楽しそうになったが、それは本当の彼、そして本当の人生ではない。ただYESと言っているだけだ。NOもYESも言え自分で選択できるようになって始めて彼は自分の選択で生きるようになったのだ。


セミナーの教祖が「YESと心から言えるようになるために、最初は全てに対してYESと答えるように仕向けている」といっていた。
セミナーの目的は人々がたんにYESということではなく、心からのYESをいうことなのだ。

 

カールはボランティアなんて興味がなかったのに、恋人・仲間たちと最後ボランティアをしている。YESからの呪縛から解き放たれたのにボランティアをしているのは、『彼がそれを望んで行いホームレスからのお願いに心からのYESを発している証拠』だ。このシーンはセミナーのあとにホームレスと助けた冒頭シーンと対比構造になっている。あの時のようにいやいやYESを言っているわけじゃないのだ。それほどまでに彼は成長したし、他者のために生きようという心意気とそれに賛同する仲間を手に入れた。

 

細かい伏線の回収が面白くて、そこも爽快であった。
忙しさや煩わしさにかまけてNOと否定的になってしまう現代人を風刺する良作。