見るの遅すぎて大後悔【トップガン マーベリック 感想】

数々の映画好き、そして映画コメンテーターが絶賛していた本作をやっと見に行った。なぜやっと見に行ったかというと正直1986年公開の「トップガン」が非常に微妙だったからだ(同作でトムクルーズは一躍有名になる)。
前作がなぜ微妙だっのかというとそれはまず、映像のクオリティに問題があるのだろう。ジュラシックワールドでは「恐竜もいまや観客にとって動物園の動物と変わらない」というセリフがある。これはジュラシックパーク作品を見ても現代のCGに完全になれた我々にとってはそこまで目新しいものではないことを意味するメタ発言だ。これと同様に今更1986年の映画でアクションを見せられても令和を生きる者にとって飛行アクションシーンはそこまで迫力があるものでなかった。
次に、見通しが持ちすらくストーリーの平凡さ及び感情移入のしずらさという問題があった。フラグこそあるものの友人が死ぬのは突然で、そして卒業式の日にいきなり決戦となり視聴者としてはどこで盛り上がるのかわかりずらい。そして、マーベリックが抱える葛藤は、友人が死んだことによる憔悴感であり、ドラマとしてはそれをどう乗り越えるのかが見どころである。にも関わらず飛行シーンの戦闘に多くを割かれあまり人間の感情がうまく引き出せていない気がしていた。

対して本作はこれらの懸念事項を見事に裏切ってくれた。


Ⅰ見通しの大切さ
これまで映画を見てきた中でも火垂るの墓のように最後のシーンを冒頭にもってきてる映画は数多くある。冒頭の盛り上がるシーンまでは回想で作成し、クライマックスだけ時系列で映す作品もある(これの代表例としてスラムドッグミリオネアがあるが同作の冒頭では「大金を手に入れたのはなぜか」と聞いており、最後の結果を一番最初にだすという意味では火垂るの墓と重なる)。
いままで見てきたほとんどの作品がこのどちらかを使っているのではないかと思うほどこれらの手法を取る映画はおおい。多く今思いつくだけでも、タイタニック、花恋、インセプション、500日のサマー、浅草キッドなどあげればきりがない。
一見、ネタバレにも見えるこの手法をなぜ多くの作品は用いるのか。
ひとつは、作品を通しての見通しを持たせることでどこが一番盛り上がるのかを伝えるという役割がある。最大のクライマックスはどこかを提示してくれたほうが視聴者もみてて気持ちが良いし、感情が乗りやすい。これからどうなるのかというストーリーに関する道筋を立てたほうが観客の集中は持続しされるのだ
(小学校の授業でもこの見通し重要論がよく唱えられる。これから何が起きるのかあらかじめわかることは人の集中力は持続する。二時間以上ある映画においてみさせて飽きさせない演出とは非常に大切だ)。本作は火垂るの墓やスラムドッグミリオネアのように回想や時系列を入れ替えるシーンは一切ない。しかし、前作と違って、作戦決行日は何時でそのために準備期間がどれくらいあって、今何をしなければいけないということが明確に示されるとともに、作戦準備期間と作戦実行期間が映画の前半と後半で分かれている。当たり前のように思うが、この作戦実行日が明確になっていることが視聴者にとっての見通しとなれた(前作のトップガンでは卒業式の日にいきなり決戦だったのでこの見通しの良さが際立って感じられた)。

 

Ⅱ視聴者が求めるのは結果<過程(ドラマ)
タイタニックでは、タイタニックが沈んだ日のことをおばあちゃんになったローズが回想していく。そもそもタイタニックが沈むことは歴史的事実であり、ネタバレでさえない。それでもジェームス・キャメロン監督はタイタニックが沈む映画をみるし、我々もいまだにタイタニックを見る。ここから導きだされることは観客も監督も物語のエンディングがどうなるのかというのは興味がないということだ。視聴者はそこに生まれるドラマを目当てに見に来ている。
ここが初代トップガンとの違いかつその初代の流れを汲んでいて非常に良かった。友をすでに失ったマーベリックは訓練生に執拗に作戦の失敗=死であることを伝え、そしてだれも失いたくないと思ってもいる。ここに人間の葛藤だったり悩みのようなものとそれを乗り越えるための訓練と成長が見られ、一つのドラマになる。
前作を生かしてドラマ展開でよかったし、ここが飛行機やトムクルーズがただかっこいいだけの前作と大きく違った。

 

まとめ
映像技術が進化しているのは間違いない。見どころは飛行機アクションシーンではないといわんばかりの論調をⅡでは展開したが、飛行機アクションシーンも非常に素晴らしい。その映像技術には圧倒されるがトムの進化も決して負けていない。
メイキング動画をユーチューブで漁ったが、「トムが自ら行動してトレーニングするから自分たちもついていけた。自分だけでは無理だった。」と数人のキャストが述べていた。これはまさに本作中のマーベリックにもろ重なる。
トムクルーズは自分にマーベリックの姿を重ねていたのかもしれない。初代から言われる通りトムクルーズは地球上でもっともかっこいいといっても過言でない。それほどトムクルーズはかっこいい。
だけれども、初代はトムと戦闘機がかっこいいという発想から、本作は人間ドラマ
に力点を注いだためトムのカッコよさがその外面内面ともに胸に響き渡る。

戦闘機の映像美、見通しの立てやすさからくる明快なストーリー設計、そしてそこで描かれる人間のドラマ、そしてそれを実現するマーベリックとトムのかっこよさ。
言葉では伝わらないほどの魅力と興奮が感じられた。