タイタニック 感想

すごく大好きな映画の一つ。ラストは切なくてとても素敵。


 本作のテーマは一つ「極限状態に陥った人はどういう死に方/行動を選択するか」ということだ。

 

死の間際になって色々な行動をする人々が描写される。以下にざっとあげる。
・子どもを助けるジャックとローズ
・子供を利用して助かろうとするローズの婚約者
・最後まで職務を全うする音楽家たち
・スピードをあげることを進言したくせにそうそうに逃げる新聞記者
・操縦室で覚悟を決めて死ぬ船長
・船が傾くシーンで宗教にすがる人たち
・紳士らしくいるといって危機事態なのにブランデーをたのむ紳士(こいつは当初拒否して他にも関わらず結局救命同位きてなかったか?)
・室内で死ぬ老夫婦と子どもをつれた家族

 

 死に直面した際に人はどういう行動を取るのか、それぞれの個性・本性が現れる。これをみて自分を省察することが一つパニック映画の醍醐味であると考える。

 

 ただタイタニックのテーマはそれだけではない。本作は「人がどう死ぬか」をテーマにしていると同時に、「どう生きるか」ということもまたテーマにしているのだ。

 

 ローズは最初船の後ろの先端から落ちて死のうとしていた。それは自分の人生が決定付けられていることへの不満からくるものであった。ここではローズは生を完全に諦めていた。
 そしてタイタニックが沈む道中、ジャックを助けにいくという勇敢なシーンがありつつも、助けたジャックに「こっちはダメだ」と通路を案内されたり、船員が鍵を落として見捨てられた際に「助けて助けて」と叫んだりしている(その間ジャックは自ら鍵を床から拾いあげて2人は助かる)。この時はジャックに頼っている面が目立つ。
 彼女の変容が見え始めるのは、船が沈み始めて乗客が船の最後部に集まるシーンだ。ローズがジャックに「ここは私たちが最初にであった場所だわ」と話しているときに、横で子どもに「もうすぐで楽になれるわ」と話している女性がいて、その女性をローズが見つめるシーンがある。
 このシーンは一度は身投げしようとした場所で、生を諦めたその女性とまだ生きたいと願うローズの対比を示している。そして最終的に、ローズは自ら笛をとり助けを呼び生きのびる。

 

最後おばあちゃんになったローズが、
「ジャックはあらゆる面で私を救ってくれた」
と回想している。

 おばあちゃんローズの写真を見るとジャックと話していた乗馬を体験できたようだし、その他にも飛行機?と一緒に写っている写真もあり、色々とチャレンジの多い自由な人生を送ったようだ。ローズおばあちゃんがいった「救う」とは命が助かったということだけでなく、生き方そのものが変わったということであろう。

 

ジャックがローズに最後にいったセリフ

「君はこんなところで死ぬべきでない。暖かいベットで死ぬんだ」

ローズはその通り死ぬのだが、彼女はかつて嘆いていたような決まった路線を歩く人生ではなく、むしろジャックのような自由を謳歌する人生となったのではないだろうか。ジャックはローズの生に活力を与えそして生き方をも変容させたのだ。
 
 パニック映画において「極限状態に陥った人はどういう死に方/行動を選択するか」ということがテーマ設定されることは珍しいことではない。しかし、タイタニックは「人の死に方」とともに「人の生き方」という正反対のテーマを包摂する映画であり、それが最大の魅力であろう。

 

追記1
これ以外にも、階級制が本作の大きなテーマである。一等と三等の価値観そして待遇はあまりにも違う。そして一等の上級階層は常に悪く描かれるのが本作の特徴だ。太った新興成金のおばさんが出てくるが、彼女は伝統的な上級民からは嫌われている。しかし、上級階層の中で彼女のみが「人」なのだ(彼女だけが、ボートを戻すことを提案したし、その際「お前らは人じゃない」といっていた。ちなみにジャックに服を貸したのも彼女だ)。生まれつきの上級階層民は三等階層の気持ちなど分かるはずもない。成り上がった彼女だからこそ分かるのだ。上級階層への批判が込められた作品でもある。

 

追記2
 ローズおばあちゃんは最後眠っただけなのか、それとも死んだのかという論争があるらしいが、筆者は最後ローズはあそこで死んだんだと思う。
なぜなら、本作では船の後先端部分が死を、前前端部が生を表すメタファーになっており、ローズおばあちゃんは船の後ろから碧洋のハートを海に落としたからだ。
(ローズが自殺しようとしたのは船の後ろ、そして二人がラブラブで生に希望を見出し有名なシーンは船の前部分で行われる。よって船の後ろ=死/前=生というメタファーが成立する)